○O脚改善・予防に向けたインソール

『最近、O脚がひどくなってきて・・・膝も少し違和感や痛みを感じる・・・』

このような不安を感じている方は多いのではないでしょうか。

先天的(生まれもって)なO脚傾向は、下腿骨である脛骨の内弯(内側への弯曲)などによって見かけ上、認められる方は多いです。

ただ、関節が「変形」している状態ではないので、変形による痛みなどはないはずです。

これが、歳を重ねるごとに徐々にO脚になってきた(後天的)という方は、注意が必要です。

そのO脚化してくる要因ですが、様々な説が言われています。

そもそも「O脚」とは、膝関節が外側に変位することで医学用語としては「膝関節が内反位」にあることを指します。

そして、歩行時に起こる膝関節の動揺「ラテラルスラスト」(膝関節性の外側動揺・内反動揺)が出現しやすくなります。

これは、膝関節の内側部に圧縮+回旋ストレスを与え、外側部は伸張+回旋ストレスを与えています。

このようなストレスが歩く度、体重をかける度にかかることで、関節内外の軟部組織に負担をかけることになります。

そして、その負担が限界値を超えてくることで、違和感や痛みの出現につながります。

では、膝関節の内反ストレス・外側への動揺(ラテラルスラスト)を改善するため、予防するためにはどうすればいいのでしょうか。

「体重過多」による減量も関節に負担をかけないためには非常に重要です。

ですが、ここでは「体幹機能・股関節機能と足部機能」がO脚発生や膝痛の増悪に大きく関わっていることについて解説したいと思います。

実際に、内反変形型の変形性膝関節症の改善と予防を目的にインソールを作られに来られたクライアント様を一例にご紹介します。

●60代女性

●30代の頃、登山で両膝を痛め(右<左)、その後ダンスや登山で膝を痛め、変形性膝関節症の指摘を受けた。また、7年前に尻もちをついて腰痛圧迫骨折の罹患。現在少し痛みを感じるため、悪化しないようにするためのインソール作製を希望。

●裸足歩行

注目すべきポイントは、「右下肢の荷重期における体幹の右への側屈運動」です。

そして、「左下肢への体重移動が不十分」で右下肢優位な荷重パターンとなっています。

注目ポイントをピックアップしてみます。

 

体幹・骨盤帯が、しっかりと股関節上へと移動できないがために、重心が膝より内側に残ってします。この問題は左下肢に特に強く、左股関節機能と体幹機能が協調的に働いていない可能性が高いことが予測されます。この場合、下肢外側筋群などへの依存が高く、外側広筋、腸脛靭帯、大腿筋膜長筋、長腓骨筋などの過活動+伸張ストレスが加わり、タイトネス(過活動による筋の硬さ)や疼痛を発症しやすかったりします。

また、膝が外側に動揺(ラテラルスラスト)しています。この場合、膝関節内側に圧縮ストレス、外側には伸張ストレスが加わっている状況となります。膝内側の関節内の半月板や関節軟骨などが変性を起こし、痛みの要因となっている可能性があります。

そこで、安静立位の状態を確認してみましょう。

 

この安静立位では、膝の内側は接していないですが、少しO脚傾向にあることがわかります。ですが、明らかな変形はわかりません。また、身体重心位置は右側に変位していることが予測されます。やはり右下肢優位の荷重パターンとなっている可能性が高いです。そして、下腿部分を観察すると、左側の下腿が外側に傾斜していることがわかります。右側と比較してわずかに外側傾斜が強いため、歩行時も同じような現象が起きやすいです。

もう一度、歩行時の立脚中期前半の画像を確認してみると、下腿外側傾斜の左右がわかると思います。

こうやってみると身体重心は常に右側優位になってることが分かると思います。

これらの現象は、膝関節へ「ストレス」として常にかかってしまっていることになります。そのため、「膝が痛い」からといって膝を治療しても対症療法となり、また痛みが繰り返されることになります。

よって、この「姿勢や動き方を変える」ことが膝の痛みに対する改善策となります。

そこで今回はインソールによって、足部アライメントや足部機能を調整してみました。

【インソールによる変化】

●安静立位(全体と下腿部)

身体重心の右側変位は残っていますが、背中が伸びて(胸椎の伸展)、骨盤が起きている(骨盤前傾)ことがわかります。

下腿部分に着目してみると外側への傾斜がわずかに軽減していることがわかります。

●歩行

裸足歩行(上段)とインソール歩行(下段)です。こうやって比較してみるとまずは「頭部と体幹の安定化」がよくわかります。背筋も伸びて、歩幅もアップしています。勿論、歩くスピードも向上し、前方推進力がアップしています。

では、部分的に比較してみます。

右下肢の立脚中期(前半)です。右肩下がりは若干残存していますが、「頭部・体幹・骨盤の正中化」「下腿の外側傾斜の軽減」が認められ、身体重心が股関節にしっかり乗って、「膝関節のラテラルスラスト(内反ストレス)が軽減」されている動きを認めます。

次に、左下肢の立脚中期(前半)です。右側の肩と骨盤の右傾斜が軽減(体幹の正中化)しています。そのため、右側重心が軽減し左下肢にしっかりと重心移動ができています。結果、膝関節に身体重心が近づくことで、「ラテラルスラスト(内反ストレス)が軽減」していることへつながります。

このように的確に評価を行い、足部を調整することで姿勢や動きを変化させることができます。以下がインソールを作製する前のテーピングやパッドによる評価結果になります。足部の各関節を調整しつつ、歩いてもらい、良い反応を促通する方向を探っていきます。

勿論、インソールだけで100点満点はとれません。ここから更にトレーニングやコンディショニングをすることで更に改善を図れます。

そして、このインソールを装着して歩くことで「普段使っていない筋肉」を使うことになり、無意識でのトレーニングにもつながります。

この方はお知り合いの方に

「最近、脚が綺麗になってない!?」

と言われたくらい変化が出ているようです。

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