○ 脚長差におけるインソール

まずはこちらの動画をご覧ください。

【裸足歩行】

 

 

【脚長差によるさまざまな問題】

右下腿の骨折による術後の後遺症として、「下腿骨の短縮+足関節の著名な背屈制限」を認めました。

裸足歩行(動画:上)を数十年繰り返してこられました。

踵が地面に接地しないことで中足骨頭(母趾球、小趾球)による荷重が繰り返しのストレスとして加わっていました。

母趾球、小趾球の痛みが強くなり、体重をかけることが苦痛で、歩くことに対する恐怖感が強くなり、当店をご紹介いただきに相談に来られました。

※ご紹介ありがとうございました。

□ インソールによる脚長差の軽減

□ インソールによる母趾球、小趾球荷重の軽減

□ 足関節の背屈可動域向上による痛みの軽減

以上を達成することで痛みを軽減させ、歩行に対する不安を解消するようアプローチしました。

 

【統合と解釈】

1)経過から考える現在の状況

数十年前の骨折による構造的な下腿骨の短縮が起きたことで、この方の場合は「踵を挙げる(足関節を底屈する)」ことでその短くなった脚を補償していた可能性があります。

また、術後より“足首の動きが悪かった”という記憶もあったため、足関節の背屈制限(底屈拘縮)もあったと考えられます。

結果としては、「下腿骨の短縮」は構造的な変化であり、「何か外的および内的なもの(機能)によって代償すること」が必要となります。

外的な代償としては、「骨延長術による下腿骨の延長」、または「インソールによる補高」が考えられますが、基本はインソールを選択するのではないでしょうか。

そして、内的な代償パターンとしては以下の3つ(画像①)が主に考えられます。

【画像①】
①右側の足関節底屈位による脚延長
②骨盤の傾斜-脊柱の側屈・回旋による代償運動
③左下肢の屈曲による脚短縮

 

上記、3パターンを詳細に説明していきます。

①は、単純に踵を挙げること、つま先立ちをすることで、短くなった脚を長くさせ、骨盤や体幹の傾斜や側屈を出さないよう上半身の正中化を優先とした姿勢制御パターンとなっています。

つま先立ちで歩くことで何が起こってくるのか・・・問題の想起は容易です。

②は、骨盤の傾斜が起こることで、仙骨および寛骨の変位も起こります。

仙骨に隣接する腰椎、胸椎、頸椎、そして胸郭、頭部まで多くの姿勢調整パターンが個々によって起きてくるため、必ず同じ制御パターンを示すかは定かではありません。

また、寛骨が傾斜すれば、大腿骨との接点も変位することで股関節機能に大きな影響を与えます。

③は、反対側での代償パターンであり、股関節や膝関節、足関節、足部にて脚短縮位をつくり、骨盤や体幹の正中化を優先するパターンです。

特に膝関節にはストレスがかかりやすく、内反または外反位となる場合もあるため、膝関節障害が起こりやすいです。

そして、足部では後足部の回内位、足関節は背屈位となりやすいです。

これら①~③が複合して起こる代償パターンもあれば、他のパターンも考えられますが、まずはヒトが与えられた身体機能をどのように活かし、どう代償するのか。

そして、それが機能的であるのか。

それを十分に考察した上で、どうアプローチすべきかを選択していく必要性があります。

 

★ 「脚長差と姿勢の基本的な考え方」について(←こちらをクリック!!)★

 

2)機能評価とその結果

ご本人の画像になります。

まずは、立位姿勢(画像②)です。

【画像②】安静立位姿勢

右足関節底屈位、同側骨盤が挙上し、同側の肩が下がっています。

ここから推察すると脊柱は右短縮位となっているのが予測されます。

「下腿が短縮しているのに骨盤が挙上している」

これは、

□  足関節底屈拘縮が強く、下腿の短縮以上の代償となっている

□  母趾球の荷重時痛を軽減するために骨盤から持ち上げている

以上が原因であると考えられますが、歩行をみるとその結果がみえてきます。

 

次に、下腿および足部の画像(画像③)です。

【画像③】右下腿の短縮と背屈制限

 

右足部は、底屈位となり拘縮をきたしていました。

角度は、背屈「-25°」です。

足趾は、MP伸展・PIP屈曲位が強く、拘縮のため他動でも中間にまで戻すことが困難でした。

後足部は過度に内反し、距骨下関節も過度の回外位を呈し、足部は全体にハイアーチとなっています。

自動運動は可動性がないためほぼできず、拘縮した足関節と足部構造を強固にすることで骨・関節性に支持ししていることで下腿の後面筋は筋萎縮が強く、筋自体の柔軟性も低下しており、底屈筋力もMMT2レベルでした。

膝関節や股関節周囲筋は、MMT4-~4レベルで比較的支持性はありました。

そして、足底部(画像④)です。

【画像④】母趾球と小趾球のベンチ(痛みあり)

 

母趾球、小趾球とも圧痛が強く、慢性的な炎症症状が起こっている状況でした。

ベンチが肥厚することで荷重時痛が強くなり、ベンチを削ることで痛みが軽減するもまた痛みが強くなる・・・このようなイタチごっこで生活をされてきました。

以上の情報源を基に、まず何をすればいいのか、そしてその方法は何がベストであるのかを考えていきたいと思います。

 

3)改善するのか?できるのか?

私は、エビデンスに逆らい、諦めないのが信条です。(※怒られそうです…)

理由は簡単です。

0.1ミリ、0.1度でも変化すれば、ヒトの動きは変わり、メカニカルストレスのかかり方やその程度も変わるからです。

外観より観察できるレベルではないかもしれませんが、クライアント様が「なんか違う」と感じればそれが正解であることを信じています。

そして、わずかな動きの変化を見抜くことで痛みの変化とのつながりを見い出せます。

今のメカニカルストレスを軽減させるために必要な、わずかな動きを出せばいいのです。

数十年前に起こった拘縮でも変化を出すことは可能です。

わずかな背屈運動が起こることで、荷重点のズレが起こります。

一番痛みのある荷重点が少しでもズレることで痛みが変わります。

また、荷重による圧痛だけでなく、動きの中で生じる剪断力も変わることで痛みの軽減につながります。

そこを狙った上でのインソールの作製により、その痛みが大きく変化することとなります。

 

インソールのポイントは、

□  どこに荷重点を置くのか

□  どこを免荷すべきなのか

□  COPをどのように移動させるべきなのか

 

以上を考慮してアプローチ内容を検討し実施しました。

 

4)アプローチ内容と目的

①補高+インソールのパッド処方による歩行時痛の軽減

②足関節背屈可動域の改善による荷重時痛の軽減

③踵支持による荷重感覚入力と体幹・股関節の筋出力の向上によるバランス機能の向上

④体幹・股関節のアライメント調整と筋力トレーニングによる姿勢制御パターンの構築

 

5)アプローチ後の結果

【インソール装着後の歩行】

 

この時点で歩行時痛はほぼ改善し、仕事または外出時に外を歩くことへの不安感がなくなったとのことでした。

しかし、体幹や股関節機能の低下はあり、上半身の過緊張も残存しています。

まだまだ改善すべき点はありますが、

「痛みを軽減させ、歩行時の不安を解消できたこと」

本当によかったです。

インソールケアとトレーニングにて痛みを改善する可能性はあります。

お悩みの方は一度ご相談いただけると幸いです。

 

★「リハビリの継続をご希望の方へ」★

 

最後に、今回クライアント様にご理解いただき、掲載許可を頂きました。

本当にありがとうございました。

多くのお困りの方のために届けられればと思います。

 

アイソウルワークス

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