「この年齢で歩けなくなるのは困る・・・インソールで歩きやすくなりますか?」
2年ほど前より歩きにくさを感じ、ご自身でケアや治療に通われたりなど対処されてきましたが精密検査をした結果、
臼蓋形成不全と股関節の軟骨損傷(右)を指摘されたとのことでした。
徐々に痛みを感じるようになり、動きはじめ、歩きはじめの違和感や一歩の出にくさなど、不安や辛さを感じておられました。
まず、姿勢と歩行の確認を確認させていただきました。
【裸足歩行】
【立位姿勢】
歩行や立位アライメントから多くの情報が得られます。
ポイントとしましては、やはり股関節の可動性の低下が認められます。
特に、股関節の伸展・内旋・内転の動きが減少しています。
そのため、股関節の屈曲・外旋・外転位での動きが強い状況です。
また、痛みとそれ対する恐怖心から怖々歩いている様子が伺えます。
結果として、股関節周囲筋、特に2関節筋の筋緊張の高まりが強く、「ガーディング(緊張性過緊張)」が起こり、更に股関節の円滑な動きを制限してしまっています。この歩行時は疼痛はありませんでした。しかし、ガーディングによる姿勢制御パターンを学習してしまっている状態と考えます。
では、なぜこのようなアライメントや可動性に陥ってしまったのか・・・
先天的な要因が大きいのではないかと思います。
まず、脊柱の可動性は非常に乏しく、腰痛もあります。
また、下腿の内弯が強く、O脚を呈しています。そして、膝関節も伸展不全(-5~―10°)があり、常に屈曲位となっています。
股関節は、伸展―10°、PSLR70°、ASRL45°/60°。
足関節は、膝伸展位の背屈制限が特に強く、ハイアーチを認めます。
臼蓋形成不全は先天点的なものと後天的なものがありますが、生まれもっての形態が要因となっていることが多く感じ、年齢を重ねることで筋力低下や筋・関節の硬さなどが起こってくることで、更に股関節に負担がかかりやすくなり、疼痛が生じるのではないかと予測されます。
これまでは、ある機能不全(例えば股関節)に対していろいろな部位でその機能を代償してきていたところ、少しずつその代償機能が低下し、代償しきれなくなり痛みとして症状が現れることが考えられます。
ですので、根本的な機能不全のある部位の機能向上に合わせて、代償機能として機能すべき筋力や可動性を改善することで、問題部位への負担を軽減すれば痛みのコントールや後天的なアライメント不全の改善は可能であると考えます。
そこで今回は、当店のインソールである入谷式足底板により、歩行の改善、痛みの軽減を即時的に得られたため簡単ではありますが解説していきます。
早速ですが、インソール作製後の歩行の動画です。
【インソール歩行】
インソールを入れる前の裸足歩行と比較してもらえばわかりますが、
□ 歩行スピードの向上
□ 全身の過緊張感の軽減
□ ステップ幅の増大
□ 左右への円滑な重心移動(股関節への荷重の増大)
などなど、全体的な印象としては変化がでていることがわかります。
【立位姿勢の変化】
矢状面(側面)と前額面(後面)とも変化していることがわかります。
左右の重心位置は、右側変位から正中化しており、体幹アライメントも正中化しています。
骨盤が前傾位が強く、前方変位もあり、若干ですが反り腰でしたがそちらもバランスが改善傾向にあります。
なぜ、インソールでここまで変化が出せたのか・・・
足部のアライメントを変化させることで、上行性に運動連鎖が波及して無意識下で筋緊張が正常レベルに近づいたと考えます。
特に、股関節の伸展・内旋運動を引き出すための距骨下関節と中足骨レベルのコントロールがポイントであったと思います。
また、運動連鎖のみではなく、足関節の背屈運動の向上や膝伸展運動の向上、そして股関節への荷重を円滑に行うための動的な関節安定性の向上が得られたことによると予想されます。
関節アライメントを適切な肢位へ誘導することで、余計な筋活動は軽減し、必要最低限の筋活動(筋緊張)によって動的安定性が高まり、動きが円滑になります。
今回のインソールは、足部から股関節が円滑に動き、かつ痛みなく荷重できるようコントロールできた結果であり、詳細に評価をしたことがこの結果につながったと思われます。
【作製したインソール】
□ 脚長差の調整
□ 踵骨アライメント調整(後足部アライメント調整)
□ 足底外側の高さ調整
□ 中足骨レベルの横アーチの高さ調整
これらが股関節機能の変化をもたらしたと推察されます。
最後に、今回はインソールによって良好な結果を得られましたが、ゴールではありません。
重要なのは、今後の生活を苦なく過ごせるかです。
そのために、徐々に変化する身体機能に気を配り、インソール調整をその都度行っていくことが必要となります。
そして、非常に重要なのは、ケアとトレーニングの継続です。
専門家に的確に機能評価をしてもらい、どのようなケアやトレーニングを継続すべきかを助言してもらうことをお勧めします。
悪化してからでは遅いです。
身体的・経済的・時間的・精神的負担から逃れるため、「予防」を念頭にお考えいただくことが大切ではないでしょうか。
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