扁平足&術後ランナーにおけるインソール処方

ランナー・ジョガーの方にインソールを作製させてもらっていますが、先日の大阪マラソンをはじめ、各マラソン大会に出場し、怪我なく完走することを目標にされる方々が当店に来店されます。

そして、数名の方から「マラソン大会出場報告」をいただき、とても有り難く思っています。
まだ、これから参加する方もおられますが、入念に練習を行い、インソールの調整も怠らず、準備に余念がありません。

そんな中、生まれ持っての扁平足による悩みと骨折・手術後による走ることへの不安を抱えたランナーがフルマラソンに挑戦するということで当店にインソール作製に来られました。

簡単ではありますが、実際の画像を含め、インソール作製における解説をしましたので、是非ご覧ください。

【足部アライメント】

右下肢が腓骨骨折術後です。術後約8カ月経過しております。

左側は若干踵骨が内側に傾斜しており、舟状骨の位置も低くなっています。

また、右側は左側と比較して踵骨の内側傾斜が強く、後足部ともに回内方向へのアライメントとなっています。

【片脚立位と足部アライメント】

立位での後足部アライメントの左右差がはっきりとわかりました。

次に、片脚立位をみてみました。

片脚立位は、片脚で支持することで支持基底面が狭くなるため、バランス機能をチェックすることができます。

しかし、重要なのはその姿勢を制御するための機能をチェックすることです。

片側に体重をどのように移動させ、どのタイミングでもう片側を挙上させるのか、そのときの動的姿勢制御を観察することが重要です。

画像でもわかる通り、右側の下腿は外側傾斜が少なく直立し、足圧中心は内側のままで足部も立位アライメントに似て動きがありません。
また、骨盤の側方移動は少なく、対側の骨盤挙上と股関節屈曲にて重心を右側に近付けています。

左側は、骨盤からゆったりと重心移動を行い、下腿の外側傾斜と足部外側での支持(足圧中心の外側移動)ができています。

推察すると、右下肢の足圧中心は外側移動が困難であり、腓骨骨折により足部および下腿外側での支持性(外側の壁)が不十分である可能性があります。

右は特に後足部が外反位にあり、かつ距腿関節・距骨下関節の可動性が不十分であるため、骨盤の側方移動(股関節内転運動)が困難になっていると考えられます。骨盤の挙上・回旋、脊柱・体幹での代償運動が必須となりそうです。

【インソールによる立位姿勢の変化】

まずは、左の図の立位姿勢ですが、左肩が下がっています。

重心も左下肢に寄っていることがわかります。

これは、無意識のうちに右下肢への荷重を避けることで起こってきているものと考えられます。

脚長差はほぼ左右差なし、荷重時痛なしでしたので、右下肢の支持性(可動性および筋力)の低下が疑われます。

そこで、右の図ですが、足部機能評価後にインソールを作製してフィッティング後の立位姿勢です。

若干、左側に重心は変位していますが、肩の高さの左右差が軽減しています。

これは、可動域訓練や筋トレをしたわけではなく、「足部アライメント」を機能的な肢位に誘導したためと考えられます。

【歩行の変化】

左図は裸足歩行、右図はインソール処方(調整)後のフットフラット(ローディングレスポンス)・Toe-off直前の動画をカットしたものです。

本来、イニシャルコンタクトでは、後足部は回外し、足部の剛性を高めた状態で接地を迎えます。

しかし、右側は腓骨骨折と扁平足の影響で、回外位を作れず、回内位のまま接地を迎えます。そうなると「機能的脚長差」が生じ、右踵接地に向けて重心は右下方へ落ちるように墜落様の跛行を認めます。そして、踵接地→足底全接地へと進み、荷重が大きくなることで更に回内が強調され、右肩の下制が生じていいると考えられます。

立脚中期には体幹の傾斜はなくなり正中化するため、立脚中期までの動きの改善がポイントなります。

右図のインソール処方後は、右肩下がりがなく、体幹・骨盤共に前額面上では正中化を認めました。

ステップした右下肢も外転位接地が軽減し、骨盤の右前方回旋、左股関節の伸展によりステップ幅が増大しています。

右側方への重心移動要素が軽減し、前方への要素が大きくなったため、スムーズかつ楽に重心が前方に移動しています。

【ジョギングの左右差】

インソールを処方したシューズを履いてのジョグの様子(ミッドサポート期)です。

右のミットサポートでは、足部の回内運動に伴う下腿の外側傾斜が若干少ないため、体幹の右側屈で重心の右方向への移動を代償しているようです。

対側骨盤の挙上も少ないため、股関節の支持性の低下が関係している可能性もあります。

しかし、全体的にアライメントは修正され、前方への推進要素が促通されています。

ここでひとつポイントですが、扁平足や後足部回内変位が強い方のインソール調整で、「後足部の回外誘導は絶対的なセオリーではない」ということです。

重要なのは、後足部肢位が上行性にどのように影響を与えているかです。

 

「扁平足が悪い」「扁平足があるから疲れやす、痛みが出る」「扁平足だから足が遅い」

は、間違っていると思います。

トップアスリートでも、扁平足の方は多くおられます。要は「全身の使い方」によってくると考えます。

ただ、扁平足が強くて、股関節や体幹機能が低下していると多くの問題が発生します。

日頃からのケアやトレーニングが重要と言えそうです。

それでは、上記のクライアント様のインソールにおける感想をいただきましたので、是非ご覧ください。

 

↓↓↓クライアント様のご感想↓↓↓

11月にフルマラソンへの参加を予定していたものの、小さい頃からの扁平足、昨年末の足首骨折など、足首の状態が不安だったということもあり、伊佐地先生に助けを求めました。
インソール作製にあたり、身体の特徴を評価した上で、足裏にテープを貼っての歩行を繰り返し、テープの位置や厚みを変えながら、歩き方がどう変化するのかを確認して頂きました。
ミリ単位の厚さ調整により歩き方が変わることに正直とても驚きました。
インソールを削って作られる姿はまさに職人でした。
その後、インソールを靴に入れて歩く、走るなど動作を確認し微調整。動作を見て、話し合いながら納得いくまで調整を繰り返し、インソールが完成しました。
実際歩くとなんの違和感もなく、勝手に足が前に進む感覚でした。
そのインソールを使って走り込み、一ヶ月ほど後に再調整へ。
走り込んで感じた膝の痛みを相談し調整して頂いた結果、不思議なくらい膝が楽になりました。
後はさらに走り込んで行くだけです。
伊佐地先生本当にありがとうございました。フルマラソン頑張ります。

*11月のフルマラソン、無事完走されたそうです。本当によかったと安堵しております。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA